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夏の地図 [ハイロウズ - 甲本ヒロト]

切り開くというよりは
切り裂くという感じ。


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アルバム:ロブスターより



1998年発売の、ハイロウズのアルバム「ロブスター」の一番最後に
「夏の地図」という歌がある。

甲本ヒロト作詞作曲。


[夏の地図]

オバケが出そうな夜の教室で
雨がやむのを待ちながら 僕らは作戦会議
行きたいところがたくさんあって困るよ
どんなに遠くてもかまわないよ
昨日は読むもの明日は書くもの
昨日は読むもの明日は書くもの

夕立ちに濡れたオートバイで走り出し
海が見える頃 ガソリンタンクは軽くなる
世界が止まったように見えたその時に
最高速を記録する
切り開くというよりは 切り裂くという感じ
切り開くというよりは 切り裂くという感じ



本当はこのあとにサビが続くんだけど、ここでは、この
切り開くというよりは 切り裂くという感じ」という歌詞に
注目したい。

甲本ヒロトという人は、言葉の定義を改めて明確にすることで
その言葉の持つ本当の意味や、その言葉のまわりにある背景に
気付かせてくれる歌詞を書くことができる、数少ない人だと思う。

この歌詞もそう。
「切り開く」ではなく「切り裂く」だと並列することで、
バイクの疾走感、そしてバイクに乗ることの目的までをも
僕らに気付かせてくれる。

僕はちょうどこのころにバイクの免許を取った。

自転車ともクルマとも違う、バイクのスピード。
風が顔に当たる感じ。湿度の高い日本の夏のど真ん中を
駆け抜けていると、夏のむっとした空気の中にぶつかる。
かきわけるように走る。この感じこそ、「切り裂く」だと思った。

そして同時にそれは、決して「切り開く」ではない。


もともと「切り開く」とは、開閉可能な物質を開くことだ。
「開く」ようにできているものが閉じている状態のものを
開くときに使用される言葉だ。

でも、「切り裂く」は違う。
もとから入口などなく、カタマリであり、壁であり、
とらえどころのない物質を、裂くのだ。
つまり開閉不可能な物質を、裂くのだ。

「開く」と「裂く」は、そこが違う。


よくある不良ソングでは、バイクは自由の象徴になっている。
盗んだバイクなんて、お笑いのネタになってしまうほどだ。

でもここではバイクは自由にとどまらない。

「切り裂く」ためのバイクは、不良ソングのように
閉塞の世界からの脱却=自由というだけにとどまらず、
新しい未知の世界への開拓という意味で使われている。
それは冒険や挑戦に近い。

自由は、言ってみれば、「逃げ」と同じだと言うこともできる。

校則や規則や法律にキレて、そこから脱することは
自由であると同時に、逃亡でもあるんだ。

でも「切り裂く」ことは、そうじゃない。
古い世界から出るだけでなくて、新しい世界に行くこと。
その時に使う言葉なんだと思う。


切り開くのではなく、切り裂いていくこと。
それは、ハイロウズという大人のロックバンドが言える
控えめな教訓のような気もする。
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by blues-words | 2009-06-20 14:11 | コトバ
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