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 生きてるだけで、愛。 [本谷有希子] 

大丈夫たよ。


僕の好きな作家の一人、本谷有希子氏。

もともと劇団の演出家だけど、小説もとてもいい。
言葉に対してまじめな人だなぁと思う。

その本谷有希子の「生きてるだけで、愛。」という
中編がある。
 生きてるだけで、愛。 [本谷有希子] _a0129081_23522361.jpg


以下はその43ページのシーン。

主人公の寧子(やすこ)が、同棲相手の津奈木に
「死にたいかも」というメールを送ったときのシーン。

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気持ちが沈んでいくのを止められないまま津奈木の携帯に
『死にたいかも』とメールを送信した。しばらくしてから返信
があって画面を見ると、『大丈夫たよ』という文章が書かれて
いて、あたしはその『大丈夫たよ』に激しい怒りを覚える。
なんだ、たよって。人の生死に関わるメールなんだから
読み返すくらいしろよ。こんな短い言葉、打ち間違えんな
眼鏡うんこ。お前が死ね。
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自分がギリギリで、いろんなことがうまくいかなくて、
唯一頼れる人、頼っていい人にメールを打ったら、
『だ』が『た』になってた。

簡単な文章を打ち間違える。この小さな間違いに主人公が傷つく。

なんか、最近メールの文章もブログも誤字脱字を
気にしない傾向があるけど、本当の本当はそうじゃないかも。
と思わせてくれた。

誤字は、それが狙っていなければ、やっぱり誤字。
気持ちのうすーい言葉になって相手に伝わってしまう。

それが小さくて簡単な言葉だと、なおさらそう。

手紙のほうが誤字が少ないかもしれない。

誤字は、人間と機械の分業が進んだ結果、
増えてしまっているのかもしれない。
by blues-words | 2009-06-24 18:03 | コトバ
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